アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
「は、はい。
 
 高校生二年生です。

 テツロウさんの知り合いで……あの変な
 ことを言うようですが、お願いです。

 少しの間でいいから、黙って耳を澄ませて
 みてください」

「えっ?」

「お願いですから」

 これしか方法はない。

 どれほど妙に思われても、テツロウのこと
を信じてもらうには、こうする以外ない。

「弾きなさいよ!」

 ぼんやりしているテツロウに向かって、
ユマは思いきりどなる。

「あれ、弾きなさいよ。

 さっきみたいに!」

「えっ? だ、だって」

「弾いてっ!」

 ユマの勢いに押され、テツロウは
あわててヴァイオリンをかまえ、ぎくしゃく
と弾く動作を始めた。

 だが、ショウコにひさしぶりに会えて
混乱しきっているのだろう。

 そのボウイングはめちゃめちゃだった。
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