アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
 ショウコの頬をゆっくりと涙が伝い
始めた。

 テツロウは懸命にヴァイオリンを弾く
ジェスチャーを続けている。

 そのまなざしはとても優しく、
ショウコだけを見つめていた。

 その時だった。

 ユマの耳に突然、テツロウの声が聞こえ
てきたのだ。

――ショウコさんのこと、大好きでした。

(あ、あれ?)

 ユマは驚いて、テツロウを見た。

 テツロウは無言で、ヴァイオリンを
弾くことに集中している。

 それでも不思議な声は聞こえてきた。

――あの時、僕は告白したかったんです。

(これ……テツロウさんの心の声だ!)

 ショウコを前にして、テツロウの思いが
あふれ出し、ユマに伝わってくるのだ。

 ユマはそれをそのまま、ショウコに
伝えることにした。

「き、聞いてください。

 テツロウさんはショウコさんのことが
大好きでしたって」
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