アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
「もう行くんだね?」

 すぐには答えは返ってこなかった。

 少しして、テツロウが口を開いた。

「あのさ……本当は僕……じさ……」

「いい!」

「ユマちゃん」

「いいよ、言わなくて。

 事故だったんだよ。

 さっきそう言ってたじゃない」

「うん……うん。そうだね」

 テツロウはもう一度笑ってみせた。

 今度の笑顔は本当に晴れやかなもの
だった。

「あのさ、ユマちゃんもちゃんと告白
 するんだよ」

「わ、わかったわよ」 

「いいかい?

 その時のリズムはアンダンティーノ
 がいいからね」

「ア、アンダンティーノ?」

「速度記号だよ。

 アンダンテが歩く速さで、それより
 ちょっと速くってことさ。

 告白にはテンポが大事だからね。

 速すぎても遅すぎてもいけないんだ」

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