アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
「だって何が何だかわからないもの。

 ちゃんと話してくれないと困ります」

 テツロウは不満そうに眉を寄せたが、
それでもしぶしぶという感じで頷いた。

「じゃあ話します。

 そのかわり今すぐ動いていただけ
 ますよね?」

 ずいぶんと自己中心的な口ぶりに
聞こえた。

 いつも落ち着いていて穏やかな
ハルキなら、絶対にこんな頼み方は
しない。

 やっぱり彼とは全然違うとユマは
思った。

「でも私……まだあなたのお願いを
 きくなんて約束していないし」

「ええっ!」

 テツロウのきれいな顔が一気に
くしゃくしゃにゆがんだ。

 お気に入りのおもちゃを取り上げ
られた子供みたいに、今にも泣き出し
そうになる。

「じ、時間がないって言っている
 じゃないですか!」
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