月夜の散歩
目を瞑りあの頃を思い出す


「あたしね姉がいたの…双子で夕菜ってゆうの…一卵性で身内でも見分けのつかない程だったわ」


あたし達は髪型も背丈も顔もホクロの位置まで一緒だった


只一つ違ったのは性格


夕菜は積極的で好奇心旺盛なおてんば


対してあたしは大人しく人見知りも強かった


何時も夕菜か兄の後ろに隠れて様子を伺う


あの日は田舎の祖父母の家に家族で帰省していた


突然「川に行こう」と言い走り出した夕菜を兄と追いかける


太陽が照りつける熱い熱い夏の日だった…


─そんな太陽と夏があたしは嫌い─


あの日から…
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