君色ジンジャーティー
「ただいま。暑いだろ、早く日陰に入りな」

駆け寄ってくる二人を抱きしめて、日陰に入るように促す。
すると、二人は小さな門の中へ走っていく。

ちょうど二人が入っていったのは私の家。
椎名。そう刻まれている表札は、日光の反射により光っていた。

「雛子。奈月。ちゃんと手、洗うんだよ」
そう注意すると、はあいという二つの返事が向こうから聞こえてきた。
元気なのはいいんだけど。私は小さく溜め息を吐いた。

玄関では、きちんと揃えられた二足の靴に脱ぎ散らかされたこれまた二足の靴。
仕方なく、散らかっている方の靴を揃えてやった。
何度言えば守ってくれるのだろうか。
続いて、上からドタドタと足音。

「………………ただいま」
そうとだけ言うと、私は靴を脱ぎ廊下へ上がる。
行き先は、二階にある私の部屋。

すると、一拍おいて「おかえり」との声。
きっと母さんだろう。そしておそらく、いや、確実に父さんは寝ている。
扉の向こうからの声に、一言だけ返す。

鞄が重く、左肩が悲鳴をあげていた。
早く楽になりたい。
私は、部屋が漁られてないことを祈りながら足を進めていった。


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