君色ジンジャーティー

数学が終わり、英語に取り掛かろうとしたその時。
雪樹、と私を呼ぶ母の声。
シャーペンを勉強机に置き、漫画を読む雛子を連れて一階へ下りた。

時計は七時を示している。
あの後、漫画読んだりゲームしたから宿題があまり進んでないんだよな。
私は馬鹿だ。大馬鹿者だ。

机には、カレーが並べられていた。
多分、チキンカレーだ。
喜ぶ雛子は、スキップしながら机に近付いていく。

「雛子のはこっち。雪樹のはそっちよ」
母が雛子の前に少なめのカレーを差し出す。
私は、自分のと言われた皿が置いてある所に腰掛けた。

「それじゃあ皆揃ったな?」
父が微笑みを浮かべてそう一言。
母が手を合わせるのを見て、全員で手を合わせる。
「いただきます」

食べ進めながら、軽く世間話をする。主に母と。
そういえば父とは今日一度も会話してなかったな。まあ、いいか。
さらさらのカレーを口に含む。

「あのねー、わたし、みどりくんとけっこんするの」
雛子がゆっくりと母に話す。向かいにいる父はダメージを受けていた。

「あらー、そうなの。ドレス探さなくちゃね」
「…………………………」
冗談だとわかった上で計画を練る母、そして絶句している様子の父に私は言ってやった。

「父と結婚するってのはね、リップサービスなんだよ」
ついに手が止まる父を見て、母は大爆笑。
雛子は両親なんかお構いなしにカレーを貪っていた。

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