牢獄の姫君
「また一人でここにいるんだね」
「…だって…私に居場所はないから」
「君の家庭ってどんなだ?」
私はむっとした。
「知らない人なんかにいいたくありません!」
すると彼は私の顎を持ち上げた。
「じゃあ、自己紹介すれば君の“知ってる人”になるよね?」
「え…」
「俺はジャン・デュナン。歌で金を稼ぐ自由な詩人さ。フランスのブルゴーニュ地方からきた」
「あなた詩人なの?」
「そう。誰にも縛られず生きてる。君のような苦しい世界とは違う」
「でも…なぜここにいるの?ここはフランス宮廷よ」
「自由なんだ。俺はここでも。国王のお呼びがかかれば歌いにくる」