牢獄の姫君
「フローラ!」
義母の呼ぶ声がした。
すぐに行かなければ怒られる。
「はい」
「フローラ、今日は宮廷の舞踏会がある日です」
「はい」
「あなたは綺麗に着飾って来なさい。あ…でもアンヌより目立ってはいけません。それと、他の方とのお喋りは控え目に」
アンヌは義母が連れてきた私より二歳年上の義姉だ。
「はい」
舞踏会なんて出たくない。
どうせ人形みたいに踊らされて
愛想笑いばっかさせられて…
息が詰まりそうになる。
誰にも助けをもとめることもできない。
苦しい─────。