牢獄の姫君
振り向くとジャンがいた。
「ジャン…」
「ドナウ川に身を投げたと聞いた。パリでは大騒ぎさ」
「…バカにしてるのね」
「バカになんかしてない。むしろ、尊敬する」
「嘘!偉そうにいわないで!」
私が踵をかえそうとすると
ジャンは私の腕を掴んだ。
「君は死ぬ勇気があったんじゃないか!………俺は………
死にたくても死ぬ勇気がなかった。
だからこうして詩人として現実逃避しているだけだ…」
ジャンが俯いた。
ジャンは…
そんな風に考えてるんだ…
ジャンの本当の姿をみたような…