はちみつに願い事
ここ最近、本当にあいは忙しいらしい。
俺かカフェの仕事が終わって、アパートの部屋に帰ってきた後にあいは帰宅する。
となりの部屋だから、足音とか物音が聞こえるんだよな。
俺が休みの日も、出掛けていく足音が聞こえる。
無理しすぎじゃないか?
本当に、体調壊してなけりゃいんだけど。
そんな心配をしながら、仕事をする。
カラン、コロン。
また、客がきた。
もうそろそろ夕方で、混み始める時間帯だ。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
営業用の、爽やか笑顔を心掛ける。
二人の、女子短大生。
ここから近くにある短大に通う学生は、よくここを利用する。
「あ、はい…」
まじまじと顔を見られる。
こういう客、よくいるんだよな。
イケメン店員探しにくる客。
品定めされてると思うと、なんだか肩が凝る。
席まで案内して、キッチンに入った。
「健留くん、今日も人気だねぇ」
にやにやしながら、先輩パティシエの葉月さんが話しかけてくる。
葉月さんは、センスのいいスイーツを作る、まだ若いだろう長身の男。