はちみつに願い事

夜。

だいぶ遅くなってしまったなと思いながら、アパートに帰る。
部屋の前に立ち、鍵を取り出した時だった。


がたん、がたんっ。

となりの、あいの部屋から音がした。

ばたんっ。

なんだ、と思って振り向いたのと、あいが勢いよく飛び出して来たのはほぼ同時だった。


そのまま、勢いよく座り込む。
「あい…?」

俺がそばにいることにきっと気づいてないあいは、自分の体を抱きしめ、震えていた。



「おい、どうしたんだよ?」
駆け寄り、肩を抱く。

あいはびくっと肩を震わせて俺に気づいた。


「部屋でなんかあったのか?」そう言って、ドアがあきっぱなしの部屋のなかをここから覗くが、誰もいない。

「違う、違うの…ごめんなさい…」
震えながら首を振る。


< 25 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop