はちみつに願い事
夜。
だいぶ遅くなってしまったなと思いながら、アパートに帰る。
部屋の前に立ち、鍵を取り出した時だった。
がたん、がたんっ。
となりの、あいの部屋から音がした。
ばたんっ。
なんだ、と思って振り向いたのと、あいが勢いよく飛び出して来たのはほぼ同時だった。
そのまま、勢いよく座り込む。
「あい…?」
俺がそばにいることにきっと気づいてないあいは、自分の体を抱きしめ、震えていた。
「おい、どうしたんだよ?」
駆け寄り、肩を抱く。
あいはびくっと肩を震わせて俺に気づいた。
「部屋でなんかあったのか?」そう言って、ドアがあきっぱなしの部屋のなかをここから覗くが、誰もいない。
「違う、違うの…ごめんなさい…」
震えながら首を振る。