はちみつに願い事

「…昔の、光景?」

聞いてもいいことか迷ったけど聞いてみることにした。


「…そう…。あたしが小さい頃住んでた家、無駄にでかくって。そこにおいてけぼりにされたこと、思い出したの」
小さく、さみしそうに笑う。


「夜中に目が覚めた時があっ
て、リビングに行ってみたらだれもいなくて。家中、探してもだれもいなかった。父親はいつも仕事でいなかったんだけどね…」

そこで一回、言葉を切る。

「その夜は、母親があたしを寝かしつけてからでていった夜なんだ」

二人とも、無言になる。


不意に、あいが静かに笑い出した。


< 27 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop