はちみつに願い事
「…昔の、光景?」
聞いてもいいことか迷ったけど聞いてみることにした。
「…そう…。あたしが小さい頃住んでた家、無駄にでかくって。そこにおいてけぼりにされたこと、思い出したの」
小さく、さみしそうに笑う。
「夜中に目が覚めた時があっ
て、リビングに行ってみたらだれもいなくて。家中、探してもだれもいなかった。父親はいつも仕事でいなかったんだけどね…」
そこで一回、言葉を切る。
「その夜は、母親があたしを寝かしつけてからでていった夜なんだ」
二人とも、無言になる。
不意に、あいが静かに笑い出した。