時空奏者
始動するのは何
下克上は難しい
「いてぇっ!!もう少し優しくしろっ」
「こら、動かないの。
私が天使のように優しく、消毒までしてあげてるのに。
だいたい、十分優しいでしょうが。
……なんなら、上に言って
拘束だってできるんだからね?
わかった??」
笑顔でさらりと悪魔的なことを言う、自称天使ことサリア。
「エ、エレン……?」
場所は、未だに良く分からない土地〔オルリア〕
時は、ハルカが初めてオルリアに来た時から3日。
「…ってぇ!!こん…の……!腐っちまえっ、サリアの悪魔!」
今の状況を説明すると……
ハルカから見て左手に見えるのが
頬に傷、足に傷、腕に傷。
つまりどこもかもに傷がある涙目のエレン。
「ふん。…エレンのバカ!」
また、右手に見えるのが
傷薬を片手にぷんぷん怒る、
ふわふわの金髪を綺麗に編みこんだ超絶美少女サリア。
「…あのー、あたしはどうしたら…?」
さっきから華麗なまでに2人に無視されるハルカ。
―――悲しい…!
「…はい、終わり!
しばらくは運動禁止。
トレーニングなんか絶対ダメだからね?
それから、毒消しもちゃんと飲んでね?
エレンの人体が稀(まれ)に見る回復能力の高さは認めるけど…」
「うるせぇな、飲まないに決まってんだろーが」
「…私はちゃんと言った!もう、知らないからね!?
エレンのバカッ!
……心配ばっかりかけさせないでよ」
ぐいぐいと妖しい色をした液体が入っているボトルを押し付けるサリア。
それを軽く流し、
やっとハルカの存在を思い出したエレン。
「あ、バカルカだ」
「違う!!」
―――変なあだ名を定着させるな!!
ハルカの存在を思い出したサリアも慌てて笑顔を浮かべる。
「あら、ハルカさん。ふふ、…お久し振りですね?」
「…ははは、お久し振りですー…」
―――まさかの二重人格でしたか、サリアさんっ!!
天使なはずなのに、悪魔みたいです!!
しかしドン引きのハルカにお構いなしに、
サリアはニコニコ笑いながら小さな手でエレンの頭をたたく。