時空奏者
「んー…?」
「あ、起きた。ハルカさ、痩せろ。あたしの腕がもげるかと思った」
ハルカの目覚め早々失礼なエレンの言葉を華麗にスルーしてあたりを見回す。
薄暗い部屋だった。
クラシックなシャンデリアが部屋に僅かな明かりを灯している以外、そこには灯りがなかった。
窓はあるものの、光そのものが全く入らないようにカーテンで閉め切られている状態だった。
「どうぞ。…少し冷めてしまいましたが」
「っ!!」
お茶を持ってきてくれた彼には失礼だが叫びそうになる。
まあなんとか叫ぶことは避けれたが。
―――それでも。
「やっぱ、イノはフードを取ったほうがいいんじゃね?」
「……わ、私もそう思いますっ…!」
―――不気味なもんは不気味なんだっ!
「…。そう、ですか?僕、顔に自信ないんですよ」
はははと笑う彼。
どう反応していいか分からないハルカ。
エレンは舌打ちをした。
諦めた彼はエレンに話を振った。
「それで今回は…
ヴァン様の所から抜け出したはいいもののアクアの皆から叱咤の後、
居た堪れなくなったエレンは言い訳をして逃げてきたという訳ですか?」
「大正解です!!」
「おらどの口がそんな事言うんだ、あ゛?」
思いっきりハルカの足を踏むエレン。
「っいぃった!!」
「ふんっ!」
ぷんすか起こるというよりは、どっかーんと怒ったエレンはふんぞり返っている。
そして足を踏まれたハルカはローファーを脱ぎ足を撫でていた。
「まぁまぁ。大体はロウから聞いてるので分かってますよ。
ハルカさんのを取り出せないということなんでしょう?」
苦笑いの彼は、立ち上がるとハルカの手を引いた。
「っへ?」
「行きますか。早いほうが、あなたにとってもいいでしょうし」
そうしてエレンをほったらかしにしたまま、
ハルカは連れ去られたのだった。