Time is gone
「うーむ。TIGと書かれておるが、聞いたことのないメーカーじゃな」
 なーんだ……、僕は溜息と共に吐き捨てた。
「じゃが、作りはしっかりしておる。この重さ、メッキではなく純金かもしれん」
 純金という響きにより、僕の瞳は輝きを取り戻した。
「マジ! 純金だったら相当価値あるよね? あーぁっ、何かもったいなくなってきたなー」
「何がもったいないんじゃ?」
 祖父は不思議そうな目で僕と時計を見比べた。
「その時計、じいちゃんにあげようと思っていたからさ」
 すると祖父は、台所に向かって大きな声を上げた。
「ばあさん、洗濯物は取り込んだか? 雪が降るぞ!」
「えっ、雪なんか降るの?」
「あぁっ、大雪じゃ。一メートルは積もるかもしれん」
 祖父は窓の外の真っ暗な空を見上げ、しみじみと答えた。
< 108 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop