Time is gone


 居間に戻るとテーブルの上には潰れた二本の空き缶があった。不貞腐れた男が、がぶ飲みしたのだろう。だがそこに当人の姿はなかった。すでに寝室で夢の中だ。
 私は空き缶を取り上げると、呪いのように呟いた。
「このビールだって私の稼いだお金で買ったのに、ゴミ箱にすら捨てない。一体、何様のつもりよ」
 私はこれ以上暗い気持ちにならないよう、首を左右に振った。
「明日は休みよ。給料も入った。ずっと狙っていた、シャネルの新作バックが私のものになるのよ!」
 私は自らを励まし、空き缶をゴミ箱に捨てた。そして冷蔵庫からよく冷えたそれを取り出し、その場で一口含んだ。
 乾いた喉を心地よく潤すその刺激は、どんなに手練れた男の愛撫よりも優れている。
 居間のソファーに腰を下ろした私は、よいしょっ、と言っている自分に対し、自嘲の笑みを浮かべた。
 私も今年で二十五歳……。
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