Time is gone
 あの少年が言っていたことは正しかった。時計は私の役に立った。愚かな私の目を覚まし、真っ当な人生を歩むための、切っ掛けを与えてくれた。
 キャバ嬢をやっていた過去も、風俗嬢をやっていた過去も変えられなかったし、借金も残ったままだ。でも私はもう一度、一からやり直そうと思う。そのために時計は、きっと私を選んだのだから。
 一からやり直すのに、時計の力があれば楽だろう。でも、それではまた同じ過ちを繰り返してしまう。そんな気がする。
 私は何かによって自分を輝かせるのではなく、自らの力で再び輝かなくてはならない。その方法は分からない。一からやり直すと言うことは、その方法から見つけだすことなのだろう。
 大丈夫、きっと見つかる。私は一度、落ちるところまで落ちたのだから。自分の力だけで、きっと這い上がってみせる。だからあの少年がしたように、私もこの時計を手放す。
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