Time is gone
Case5 雅樹
ミーンミンミンミンミーン。
五月蝿いだけの蝉の鳴き声で目を覚ました。重たい瞼を擦りながら時計を確認すると、すでに昼の一時を過ぎていた。
「何だよクソっ、一時かよ! 蝉なんか絶滅しちまえ! 生態系に支障をきたしたとしても、そんなこと俺には関係ねぇっ!」
俺はそう毒づき、再び眠ろうと瞼を閉じたが、眠れなかった。暑くて眠れないのだ。全身にはじっとりと汗をかき、その不快感により一層苛立った。七月も中旬を迎え、梅雨も終わった。暑さはまさにピークを迎えようとしていた。
枕もとからリモコンを取り上げ、エアコンのスイッチを入れるが、ウンともスンとも言わない。七月の初旬、それは暑さのピークを迎える前に、突如として壊れてしまったのだ。そのことを思い出し、苛立ちは頂点に達した。そしてそのはけ口を求めるように、リモコンを壁に投げ付けた。