Time is gone
 昨夜は大猟だった。現金があまりなかったのが唯一の心残りだが、欲を出してはならない。それでも期待以上であったことに変わりはない。
 俺は入念な下見を繰り返す内に、骨董品好きの老人が一人暮らしをしているという情報を入手した。だがその老人は滅多に外出することがなく、その機会を待ち侘びていた。
 そしてチャンスはやってきた。その日、下見がてら老人宅の前を通ると、人の気配がなかった。その前日もまた、そうであった。聞けば老人会の旅行で、一週間ほど韓国旅行に出かけていると言うではないか。俺はさっそくその晩、老人宅に忍び込んだ。
 楽勝ムードで裏口の鍵を開け、家に忍び込んだ……まではよかった。だがそこで、すぐに人の気配を感じた。長年の勘による賜物だ。足を忍ばせ寝室と思われる部屋の襖を開けば、お見事、老人が鼾をかいて眠っていた。俺は焦るでもなく、十分な情報収集を怠った己を呪った。
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