Time is gone
 俺は躊躇いながらも、それらには手を出さなかった。誰もいないならまだしも、そんな大きなものを運び出すには、手間も時間も掛かる。何より、気付かれる恐れがある。繰り返すが、欲を出してはならない。それがこの稼業を生業としてやっていくための、最大のコツだ。
 何はともあれ、昨夜の報酬は中々のものだった。一ヶ月か二ヶ月は安泰だろう。先ほどまでの苛立ちなどとうに忘れ、意気揚々と仕分け作業を続けた。
  そう、何を隠そう、都内外れ江戸川区の住宅街を騒がす空き巣の正体は、他ならぬ俺、自称平成のネズミ小僧、伊藤雅樹様だ! 
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