Time is gone
 その思わせ振りな言い方が気になった。俺は言われるがままに、写真を捲っていった。どれも何の変哲もない写真……、のはずだった。その一枚を手にするまでは。
 まさか……。そんなバカな! 
「その人、誰だか分かる」
 雪菜の顔が歪んだ。いや、視界の全てが。
「その女の、男よ」
 そこには、梨花と見知らぬ男が写されていた。
「客だろ……仕事柄、他の男と腕を組んで歩くこともある!」
 客ではない。それは分かっていた。そこに写されている笑顔は、一目で恋人同士と分かるそれだった。分かっていても、あらゆる可能性にすがり付きたかった。認められなかった。
「二人は、一緒に住んでいるのよ」
「兄妹だ! 兄妹で一緒に住んでいるんだ!」
 しんくん……、その憐れむような声が、表情が、俺の怒りを増幅させた。
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