Time is gone
「そんなことよりばあちゃんは? 腹減ったんだけど」
「ばあさんは病院じゃよ。饅頭があるから食え」
饅頭かよ……、不平を洩らしながらも僕はそれにかぶりついた。食欲は食べ物を選ばない歳だ。
「じゃ、借りてくよ」
饅頭を食い終えた僕は、祖父の釣竿を持って玄関に向かった。唯一の趣味、いや、生き甲斐、それは釣りだ。真冬の川に釣糸を垂らしても、ろくな獲物は釣れない。それでもその時間だけが楽しみだった。
「防寒はしっかりするんじゃぞ。……それとこないだの殺人事件、まだ犯人が捕まってないんじゃ、十分気を付けるんじゃぞ。まだこの辺に潜伏している可能性もある。お前が次の犠牲者にでもなってみろ、次はわしらの番じゃ」
「分かってるよ。暗くなる前には帰るから。……って言っても、日没まで一時間もないか。じゃ、行ってきます」
僕は勢いよく玄関を飛び出した。背後で、バタンという音が響いた。
「ばあさんは病院じゃよ。饅頭があるから食え」
饅頭かよ……、不平を洩らしながらも僕はそれにかぶりついた。食欲は食べ物を選ばない歳だ。
「じゃ、借りてくよ」
饅頭を食い終えた僕は、祖父の釣竿を持って玄関に向かった。唯一の趣味、いや、生き甲斐、それは釣りだ。真冬の川に釣糸を垂らしても、ろくな獲物は釣れない。それでもその時間だけが楽しみだった。
「防寒はしっかりするんじゃぞ。……それとこないだの殺人事件、まだ犯人が捕まってないんじゃ、十分気を付けるんじゃぞ。まだこの辺に潜伏している可能性もある。お前が次の犠牲者にでもなってみろ、次はわしらの番じゃ」
「分かってるよ。暗くなる前には帰るから。……って言っても、日没まで一時間もないか。じゃ、行ってきます」
僕は勢いよく玄関を飛び出した。背後で、バタンという音が響いた。