くじら
壱章 それは罪?
「るーり子さーん、…どうしたの?」
友人の 亜美子さんはくるりと振り向いた
「え……、あの人は誰なのかしらって?」
ちょっと遠くにいる
着物姿の男性
しかも女学校の敷地内に…
「……新しい先生じゃないかしら。ほら、国語の新谷先生がお辞めになられたから…」
新しい先生。
黒い着物に 黒い髪
笑って 話しているのに
本当の笑みじゃないみたい…
「まぁ、暫くしたらご挨拶されるわよ。行きましょ?」
「えぇ……、そうね」
桜が彼に重なって見えた
黒と桜