くじら




「瑠璃子さんにアンタの事言ったよ。…本人から聞いた?」




久白兄さんは
立ったまま自分を見ている




見下されている
みたいで苛々してくる



「聞きましたよ。」



ただ淡々と俺を見ている…



「まぁアンタの事好きみたいだけど、…いずれは俺の恋人にするから、悪く思わないで下さいよ」





「…用はそれだけですか。叔父さんから、手紙預かっていると聞きました。出して下さい…」




つまらない男。





「女中に預けてあるよ。あと最近苦情…というかやり過ぎだって、父さんが言ってるよ。…うまくやらないとバレたら危ないんだからアンタも…俺らも。」





久白兄さんの仕事



教師ではない。
社交界の裏で暗躍する仕事…





彼にしかできない仕事…




藤堂の家の秘密中の秘密…







「気を付けますよ。次は財閥の榊家でしたよね…。」






久白兄さんは笑って 言った。






笑って言う態度が
ぞっとする。





彼女はどこがいいんだ?
こんな男の…
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