くじら


「僕は藤堂の家に生まれ何不自由なく育ちました、…僕が15才の時母が亡くなり…丁度、父親が忙しい時期で僕は、ある家に世話になりながら学校に行く事になりました。…」




「そこで会ったのが、子どものいない夫婦の奥さん。…その人が僕が好きになった人…」






先生は淡々と話していく



「名前を聞いていいですか」



「…澄さんと言います」




澄さん…




「……あの時程楽しかった時はないです。今の瑠璃子さんみたいに、好きだけで結婚出来ないのは可笑しいと、何回も思いました…」





でもダメだった


先生はそれで…信じなくなった






「確か、澄さん生きているって、なら何故会いに行…」




口に出すまでは答えが分からなかった疑問





すぐにわかった


澄さんには旦那さんがいる…






「……一生会わない事を理由に許してもらいました。だから無理なんです」








ガタンガタン


馬車は揺れる





「すみません。先生…」





「瑠璃子さんのせいでは…ありません。過去は変えられません、」






ポンと頭に手を置いた

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