くじら
「あ、先生いらしたわ。じゃあ放課後にまたね…」
綾子さんは嬉しそうに席に戻っていった
綾部織人さんか…
憂鬱だった気分が少し晴れてきた。
「織人さん。……小さい時は冷たかったのよ。私もそれまであまり外国の人を見たことなかったから…、」
馬車の中で綾子さんは話してくれた、
「…英語覚えるまでまともに話してくれなかったのよ。日本人とは口も聞きたくない…って。」
「口も聞きたくないって、そんなに日本人が嫌いだったのかしら…」
ガタカタと馬車の音が響く。
「やっぱり偏見の目があって…あまりいい思いをしなかったらしくて…。」
―信用出来ないんです。
「そのお陰で私は、英語にのめりこめたから良かったけど…。」
だから綾子さんは英語が好きなんだ…
頑張って会話する為に覚えた英語
「そろそろ着くみたいだわ、瑠璃子さん。」
「えぇ…」
綾部織人さん…
少しだけ先生に似てる気がする。