くじら
















「織人さんたら、もぅ…」




「…ごめん。課題は終わった?」




「もちろんよ、ちょっと人に頼ったけど。」




綾さんはほらと
課題の布を見せた。


「良かったな」



ふふっと綾さんは笑った



「これで避暑に行けるわね、やっぱり軽井沢かしら、伊豆もいいわね。」



「……避暑はちょっと待ってよ。綾さん、用事ができた」



「何の用事よ」



怒ったように
ソファーに座った




「……ちょっとね」


























資生堂に行った日から
1週間が足早に過ぎた




相変わらず
暑さは変わらない…







課題のノートをパタンと閉じる



あれから
先生と会っていない…





考えも、
うまくまとまらないまま


ただ日にちが過ぎていく






このまま
先生と離れるのかしら






「失礼します、お嬢様。お電話が入ってますが…」




「どなたから?」



「二階堂様という方からです。」





綾子さんだわ






もしかしたら
避暑の話かもしれない


「行くわ、」


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