くじら
車に揺られて半時
ようやく綾部家の別荘に着いた
気分が…
綾子さんは逆に
元気そうだった…
「…可哀想なくらい元気だな、綾さんは」
織人さんは荷物を
持ちながら言った
「失礼ね!楽しみなのっ……あ、藤堂先生!」
別荘の中から
着物姿の先生が出てきた
本当にいらしたんだ。
「…元気で何よりです。御招待感謝します」
「感謝なんて!とんでもありません」
綾子さんはふふっと笑った
先生は、階段を
降り私の前にきた
「すいません。せっかくの避暑なのに…僕なんかが」
「そんな事っ…ありません」
先生の手首の包帯は
取れている
良かった。
「…中入りましょう?荷物持ちますから貸して下さい」
「えっ?あ、あぁ…あの…はい」
持っていた鞄を渡した
私の力では重い鞄を
軽々と持ち行きましょうと言った
「はい…」
荷物の整理もし、
一息ついたのは3時前。
「…そういえば車で話してたんですけど、今日お祭りがあるみたいで。瑠璃子さん」