くじら


「…女の子なんだから、無理はしないで下さい。」



「はいはい。気を付けます…」



遠くから祭り囃子の音がする。


先生は何も言わなくなった





静かで、空気が冷たい。



高地だからか
東京よりも涼しい。



「―…瑠璃子さん僕に何か言いたい事があるんじゃないですか」




「……え。何かって…」




聡子さんの事?



それとも先生の事





「無いですよ。先生そんな、…」



「……本当に?」






――違う。違う


「…この前、織人君と話したんです、君のこと心配してるみたいで、」



「…そうですか。」



「僕が、君に何も言わず一人で悩んでるせいで君に心配をさせてるんじゃないかって…」



織人さんがそんな事を…







わたしは黙ってしまった




「何も言わないというのは正解ですかね?ごめんなさい、不安にさせて」




「そんな……、」




不安…



聞きたい事はたくさん
あるのに、答えを
聞くのが怖くて





聞けない






不安な事もある…
けど 何より私が怖いからだ
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