くじら


怖いから聞けない
だから不安になる










「………僕も君が不安だと心配です。言って下さい、言ってくれないと分からない…」




先生の頼りなげな声


言わないと…




「…この前、先生ご自分の事"俺"て言った時。…あの時先生が本来の先生じゃないかって思ったんです…。」





「……」





「…いつも穏やかな先生も好きです、けど、あの時の先生も先生だから。も……もちろん好きです………好きなんです」







けど…

見てしまった
知ってしまった。




だから、



「………」



なんて
言ったらいいんだろう




「……つまり、あの時の僕も好きになってくれたんですね。でも今はあの時の僕じゃないから…」






先生は、ふっと息をはいた



「……すいません、変な事ばかり言って、私」




「………参った。本当に参ったな」




「……」




「…一旦、別荘に戻りませんか?話したい事があります」






先生はそっと私の手を握った




「…はい」


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