くじら










しばらくはバルコニーで
外をぼんやり眺めた



静かで音がしない






綾子さんたちはまだ
帰ってこないのかしら…





さぁと風が吹いてきた



「…ちょっと寒いなぁ」









わたしはどんどん
欲深くなっていくのかしら



真面目な先生より
乱暴な…先生がいい…なんて





何だかこわい
自分で望んでる事なのに




知らないところで
何かが進んでいくみたいで














「寒くないですか?そんな所に立って」




振り返ると先生が
タオルで頭を拭いていた

お風呂から上がったんだ



「風が気持ちいいです。」



「…確かに風は入るけど。」



先生はタオルを
椅子の上にのせた







「……また考え事してる、大変なお嬢様だな」




わたしの
隣に来て頭を撫でた




「……少しは頭を空っぽにしないと。君が駄目になるよ」



「はい。」





空っぽにしたい…



「どうしたら空っぽに出来ますか?」




「……運動とか、君の苦手な英語を勉強するとか…」




英語……




「軽井沢まできて英語は嫌です…、避暑ですよ。先生」

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