くじら




「……」



「……先までして止める自信が俺にはないから、ここまでで許して」





先生は着物を整えた


「……」



―君は家族や
友達を棄てれますか



捨てられないでしょう?



それでいいんです。
それが普通の…選択ですから







…私が棄てられないから



先生は…しない






「君も着物を……」


「私に、傷がつくからなさらないんですか?先生…私が、四条の、貴女の雇い主の娘で。バレたら…いけないから?ですか」



なんでこんな言葉が




「……間違いが起きたらいけないから…。私が…いずれ、何処かに嫁ぐ時の事を考えてらっしゃるから!?」





先生を傷付ける言葉が
たくさん出てくる







あの使用人がして
嫌だと思った事を


先生にしてる






「…君は多分男を落とすには十分な女の子だ、何せ俺が引っ掛かったからね」




先生は淡々といつも
みたいに話す





「………正直に言えば瑠璃子さんが欲しい。でも…そう簡単には出来ない。大事にしたい、君は簡単な女性じゃないだろ」






簡単な女性じゃない。




「はい…」



「……あと少ししたら、片付くから。そしたらしよう」
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