くじら










綾子さんは ちょっとだけ
織人さんの事を聞かせてくれた






ふたりは幼なじみ
みたいなもの…らしい



「私ばっかり好き好きいってて、不公平な感じがするわ」



と愚痴を溢した。



前に織人さんと
話した時彼は照れていた



恥ずかしいから

中々綾子さんに言えないのかもしれない




「にしても、朝剣道して昼も剣道て。…何の為に軽井沢に来たのかしら」



武道場の入口に
向かいながらふんと怒っていた




「…そうね。」




武道場からは竹刀の音がする




「あ、織人さん」


武道場からちょうど織人
さんが胴着を着たまま出てきた




「…稽古は終わったの?お侍様」


「…終わったよ。いつまでも拗ねるな、話しにくいよ」




綾子さんは 頬を膨らませた




「あの…先生は?」

「川に水浴びに…。別荘まで戻ったら余計汗かくからって。」




水浴び…!、




「…すぐそこだから。歩きながら探して見て下さい、」



「あ。はい…あの」



綾子さんは ツンと
あさってを見たまま



「…お姫様は俺がなだめますから。ほらっ」





織人さんは ズルズル綾子さんを引きずっていった

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