くじら


「……先生はお魚だから、水が好きなんでしょう」


くじら…






「"くじら"…の事だね。そうかもしれない、でも残念ながら人間だから、水の中にはいれない」




くじら…は海の生き物。



「……もしかしたら僕は間違って生まれたのかもしれないね」




間違って。なんて
悲しい事を
笑って言うんだろう





「くじらになりたかったのですか?」



「……まさか、」






先生はふっと
笑うのをやめ真顔になった




「人間以外なら何でもいいかな。人は飛べないし、水の中でも生存は出来ない。…その癖、他の生物より優秀だとおごっている、」






静かに話す先生の目は
川を見ていた




「ただ知能が高いだけなのに。」


先生は、
人間以外になりたい。



でもそしたら…
わたしは、



「…確かにそうかもしれないけど。でも人は言葉を話せる、もし先生が魚だったら話せない。それに…」







「もし先生が海にいたら私は一生会えない。そしたら、…」

きっと、


「淋しい?」



先生はポツリと言った



「淋しい…です。だから、人間以外になりたいだなんて言わないで」






人間じゃなかったら
気持ちも伝わらない


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