くじら
ただ人を好きになって
人を信用出来なくなった
それだけ…
「久白て変な名前ね、読み方だったらくじらだわ」
「じい様がつけた名前で、俺も變な名前だと思う」
彼女はそうと笑った
「じゃあくじらて呼んでいいかしら…?嫌」
「別に…、」
「くじらさん。ふふ…おかしな名前。」
彼女の笑った顔を見たら
なぜか安心していた
ほっとしたのだ。
最初は母親を重ねていたんだ
でもいつからか彼女を
"母親"だと見れなくなった
焦った…
まさか
自分が好きになるなんて
好きになるつもりはなかった…
でも 仕方なかった。
「…あなたお喋りが上手くなったら、いいのに。あと愛想が悪いわ」
「顔は生まれつきで、話すのは苦手だ。上手く話せない…」
彼女は そうねと言った
「けど…あなたはそのままがいいわね。もし愛想もよくなってお喋りも上手くなったら…私よりもっといい人が来てしまう……」