くじら





彼女はいつも不安がっていた、子供みたいに






「そんな人いないよ、きっと一生」







なんて愚かなんだろう、




ガキ臭い考えなんだろう






人はそのままではいられないのに…




ずっとそのままでいられると考えていた





自分に出来ないことはないと信じていた








―先生……、






―、先生









「せんせ…っ」




「…起きたよ、お嬢様」




「良かった、少しうなされていたから…」




「悪い夢見たんですよ、」



瑠璃子さんはふっと笑った



「…嫌な夢?ですか」

「あぁ…、」







瑠璃子さんは 自分の手を握った



「…元気が出ますように」






「……」






彼女は澄さんとは違う






「大丈夫ですよ…。心配しないで下さい」



「…うなされてるのに平気な訳ないです。大丈夫じゃないときは大丈夫じゃないって言って下さい…」





「何で、ですか」


瑠璃子さんは隣に座った



「…痛いのに痛いと言わないと痛さに慣れて、何も感じなくなる…って兄様が仰って下さいました」



痛さに慣れて…か






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