くじら
# 報われない恋
「あなた、お友達はいないの?」
「……あんまり、いないといけないですか」
高等学校が終わると何をするでもなく
下宿先に帰って本を読む
下宿先…に来たのは
二ヶ月前。
母の死後 すぐに来た
父の知り合いの三高の家
その家には子供はいなかった
澄さんは綺麗で、旦那さんには大切にされてそうに見えた
「……そうじゃないけど、なんだか勿体無いと思っただけよ」
僕は何も言わなかった。
三高家の旦那さんは名前を覚えていない
『先生』と呼んでいた
実際に学校で教えているらしい…
いろいろな事を聞いたり學んだりした
先生は、…僕が真っ直ぐ家に帰ってきて
自分に教えをこうことを不思議に思わない人だった
その頃人嫌いな僕には珍しく好きな人だった
ある日…
澄さんと先生…
旦那さんは喧嘩らしき事をしているのを見た
耳をすますとそれは僕の事だった。
「勉強ばかりさせないで、久白君はまだ学生なのよ、」
「でも、彼は學びたがっている。僕には止められない―、」