くじら



見返りを求めない
人間なんかいない






そういう人間と
関われと言うのか…?












「藤堂、元気かぁ…」




「倉田。まぁまぁだな…」






倉田総一郎
唯一、僕が話す友人だった




彼は僕に
見返りは求めなかった



彼も財閥の人間で
僕と同じくらいの家柄だったから






「あぁあ、古くさい本ばかり読んで。今は英語の時代だよ…。」






「英語は好かない。表現できない日本語が多過ぎるんだ」



倉田はそうかよ と笑った






「なぁ下宿先はどうだ、慣れたか?」



「まぁまぁ。…だな」







「驚いたよ、まさかお前が下宿するとは思いもしなかったからなぁー」



英語の本を読みながら言った






「……倉田、」

「何だよ」







人と関わる事が…






「俺は、おかしいか?本ばかり読んで、勉強して、…」





倉田はふっと笑った。



「誰かに言われたのか、お前頭おかしいんじゃねぇかって?」



「…言われた。人と関われだと」
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