くじら
静加は、あまり話さないけど
人には好かれる方だ
黙っていても人は寄ってきた
「……静加?」
夜になり静まった頃、誰かの泣く声がした
「静加、泣いてるのか?」
「……」
母が亡くなって数ヶ月で家から離れた
「……兄様」
静加は すがり付くように泣いてきた
「……大丈夫だ。静加」
ポンポンと頭を叩いた
よく母様が静加にしていた癖
静加の泣いてるのを見たのは後にも先にも
この日以来だけだった
夏休みも中盤になったある日
「久白君、今日はあなた暇がある?」
「はい…まぁ。」
本を閉じて言った
「なら出掛けない?」
「どこへ、」
澄さんは笑った。
「海を見に行かない?知人が車を持ってるから…」
「はぁ……」
僕は曖昧にうなづいた
先生はいいのかと聞くと首をふった
「あの人はいないの。出張に行ったわ」
寂しそうに笑った
まるで子供みたいに