くじら
追われてるなんて
嘘みたいに穏やかに過ごした…
だけど それは
あっさりと終わりを迎えた
「久白君、ちょっと待ってて」
澄さんはそう言い
写真屋に走って行った
僕はそこらで
暇を潰していると…
黒い服を着た人間が
何人か歩いてきていた
反射的に身を隠した
「……」
三高の追っ手か?
それとも…父の…
手配は回っていても
可笑しくはなかった
むしろ静かなのが不気味だった
もう家から
離れて1週間は立つから…
僕もいろんな事が
心配になってきていた
いつまでも逃げ切れない
けど戻っても待ってる
未来は果てしなく退屈だと思った
でもいずれは
帰らないといけない
僕は学校へ、
澄さんは三高の家へ
わかってる、
甘えていたかった。
未来なんて考えないで
今だけ生きれたら良かった…
「久白君?。」
気がつくと澄さんは
僕の前にいた
「どうかしたの?」
「いいえ…」
澄さんは、
はいと写真を渡した
「……無くなさいでね」
「はい…」