くじら
「…ああ見えて友達思いで、倉田は確か瑠璃子さんに何か言ったでしょう。気にしてたみたいでした」
藤堂を信じさせてあげてくれ…
あの意味がようやく
いまわかった。
裏切られて裏切って
先生は"信じる"から
遠ざけられていて
信じる 事がわからない…
「…倉田先生。」
「――あんまり彼を信じないで下さい。外面はいい男だから……」
「倉田先生は苦手ですから…」
先生はクスクス笑った…
「……藤堂先生」
「織人君。どうかしましたか」
藤堂先生は居間で
お茶を飲んでいた…
「…一つ聞いていいですか。何故あなたほどの人が、家に執着するんです?あなたは……強いのに」
さっきの
剣道だって彼は強かった
いままで会った誰よりも…
「…強くはないよ。強いフリをしているだけ。」
「けど…藤堂家は」
藤堂家は名門の家だ
勉強、武道、作法は
自然なくらい身に付いてる
「…相手を倒す技術はある。けれども倒す相手がわからない…、」
先生はふっと笑った
「……何故僕がこの家にいるのかは、約束したからだよ。ある人と、ね」