くじら
「旦那様…」
「…あぁもう夕方か」
うとうと寝てたら
ボーンボーンと柱時計が鳴った
「…今日はお約束がおありで…」
「あぁ…。帰りは遅くなるから頼むよ、」
「かしこまりました」
ガラと玄関をあけた…
蒸し蒸しした空気が頬にあたった
「じいさんも心配してんだな…」
避暑から帰ってきて
数日、相変わらず東京は暑い
「兄さん…」
「静加。こんばんは久しぶり」
「久しぶりです。」
黒塗りの車の前に
静加は立っていた
「……少し時間がかかりますが、すいません、」
「構わないよ。ありがとう」