くじら

















「…内容は分かりましたが。」


「…大丈夫。一回死ぬだけだ」




静加は考え込んだ。


「兄さん…。」



「何だい?」




料亭は静かで
まるで誰もいないみたいだ




「……貴女をそこまでさせる女性とはどんな人なのですか…。」



「……言いづらいから伏せてたんだが、僕の教え子だよ」




静加はえ…と自分を見た



そうだ。



昔 澄さんがしてた事を
今度は俺がしている





人が見たら咎められる事





「名前は聞くかい?お前が会いたいなら名前を言おう。…静加」





「……」






先生が陸にいて
下さって良かったです…





「軽蔑していいよ静加。僕は結局はそういう人間なんだ…。狡くて醜い、」



カコンと竹があがる音がする





「…やめて下さい。兄さんは醜くなんかありません。彼女に逢わせて下さい、直ぐに…でも」






「……わかったよ。」





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