くじら




「織人、見つけた~」



織人は部屋にいた



「母さん、」




「また本読んでるのね…。お話は嫌いかしら」



ふぅと息をはき本を置いた




「…綾子さんのことですか」



「分かってはいるのね。織人…綾子さんは今まであったような子達とは違うわ、ちゃんとみてるのよ。貴方のこと」




綾子さんは悲しそうな顔をしていた




「……、」


「彼女が嫌いなの?」




「…あの顔を見てると苛々する。何も知らない癖に、…僕を綺麗だとか言って」



「知らないから綾子さんは知りたいのよ。貴方が話さないからわからないの。…織人、」




織人は下を向いた



「話してもきっとわからない」


「それは綾子さんに失礼な言葉よ」





「なぜ…母さんはあの日本人に肩入れするんですか」






「…Because that child is not man who tells a lie」




「あの子は嘘をつくような人ではないわよ、織人。もうちょっと優しくしてあげたらどうなの?」
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