くじら
須藤家…
「……今晩は、藤堂さん」
「こんばんは。」
窓から外を眺めてたらかすかに人の気配がした
振り返り、彼に言った
「……知っててもびっくりするわね。かろうじて人みたいな気配なんだもの、貴女」
「…かろうじてですか。」
「えぇ、」
真っ黒い着物を着ている彼はまるで闇そのもの…みたいだ
「…あの人は書斎にいるわ」
「わかっています…。すいません、安藤さん」
すまなそうな声
「……許さないわよ。けど許すわ、瑠璃子さんに頼まれたんですものね…。」
「彼女も心配していますから。…せめて貴方だけでも助けたいと」
闇に紛れる彼の声は小さいけれどよく響く
わたし知っています。
聡子さんが長袖着ている理由…
「…心配かけさせたわね、だから終わりにしなきゃいけないわ。」
「貴方は裏口にいて下さい、使いがそちらにいます。彼に従って下さい」
ゆっくりと私に言い聞かせる声
私は頷いて笑った。
こういう運命だったのね
瑠璃子さん。
「後を頼むわ、ありがとう藤堂さん」