くじら


「…そうだよな。いいよなぁ、いい家に生まれてなぁお前に分からないだろ?成り上がりの気持ちなんか…」




「…理解出来ません」




こわい…違う

嬉しいんだ
自由になれることが嬉しい…





ダンッ






須藤に襟首を捕まれ壁に押された



「…分からねぇよ。お前なんかには一生な!」




「……」






わかるよ
自分が落とした人間たちの成れの果て…



昨日までいた世界から落とされる




でもせめて… どこかで
生きれるように願って




ぎりぎりの所でやめた
彼女の求婚者 榊様も…




それがせめて出来ることだった…





須藤は襟首を掴んだまま下を向いている




「なぁ…やめろよ、見過ごしてくれよ。潰したくねぇんだよ、せっかく親父が積み立てたのに……」




仲間達は 須藤を支えるかどうか迷っていた



ただ動こうともしなかった…





―先生、




情に流されるな…
いつもどおりにしろ







「……」








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