くじら
綾部伯爵と二人になった
ちょっと緊張する
けど 織人さんに似ているから…
少し安心しつつ綾部伯爵を見る
「久白君の事だけど。織人の言った通り…、きっと場所は花園の別邸でしょう…、驚かせてすまないね」
「いいえ…その…」
綾部伯爵があまりに
対等に話してくれてるから
口ごもってしまう…
私は先生が好きで…
本当はいけないと
説教されてもいいのに…
むしろその方が普通なのに…
「……何か聞きたい事があるのかい?遠慮なく言ってくれて構わないよ」
優しくさとすように
綾部伯爵は言った
聞きたい事
「…なぜ私をお叱りにならないんですか…?」
「何故叱る必要がある?君は悪い事をしてないだろ、好きになったのが彼だっただけ…。何も悪くなんかない…」
……。
「…ですが、」
笑みを浮かべながら
綾部伯爵は呟いた
「君を責める気はない…。むしろ感謝している、彼は本当に澄さんが好きで、…けど駄目になった。でも君が現れ、再び久白君は考え出した…人を信じて生きるという事…」
綾部伯爵は 目を伏せた
生きるということ…
「……だから白鴉をやめたいと言ってきてよかったと思った。」
「そうですか…」