くじら





こんこんとドアが叩かれた




「瑠璃子さぁーん。いまいいかしら…」


「大丈夫よ、綾子さん」



綾子さんは複雑そうな
顔で入ってきた




「あのねぇ…うーん。あれよあれ、気にしないでね!」


「……?」


綾子さんは
あたふたしながら言った


「先生誘拐されて、不安だろうけど……私たち…かな、がいる。から…えーと、1人であまり考えないでね…」



励まして
くれているんだろうか…、



綾子さん…



「ありがとう。そうね…皆がいるわね」



皆…綾子さんや織人さん
雅昭さん…聡子さん…

静加さん…
母さま…



先生…



「良かった…。大丈夫よ、瑠璃子さん。例えば何かあっても雅昭叔父様がちょちょいとしてくれるわ…、何せ伯爵なんだから。」


綾子さんは にこっと笑った




















<織人目線>





家に帰った俺は居間にいた



目の前の人間…
藤堂静加と話すためだ



父も部屋に入ってきた




「やぁ静加君。きてくれてありがとう、感謝するよ」



白々しい笑顔で親父は笑う




まぁよくも思ってもない
事をすらすら話せるものだ…



親父は人をだますのが大好きなのだ。



だます為には嘘も
つくし笑顔だって振り撒く





議員より詐欺師に
向いていると思う…


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