くじら
わかる気はする。
自由にはなれない…
けれど簡単に
滅ぼせるものではない…
家という檻は頑丈で根が深い…
それを滅すには
それなりの力がいる…
「兄が悪いんじゃあない。僕が憎いのは、兄への罰を当然だと思っている三高家…花園家、そして藤堂家。自分達がそういう風に育てた癖に…さも見知らぬフリをしている人間だ。」
「……」
いつか藤堂先生に聞いた言葉…が頭によぎる
なぜあなたほどの人が
家にこだわるんですか…?
彼は笑いながら答えた
ある人と約束したんだ。
人間 なんでも義務だけで生きられないんだ…
まだ君にはわから
ないかもしれないね…
彼は約束したと言っていた
「藤堂先生が…藤堂家にいるのは誰かと約束されたとお聞きしたんですが。それは…?」
先生の弟は 一拍おいて呟くみたいに言った
「藤堂久遠とだと思います…僕らの祖父の…」
藤堂久遠…と
「僕も詳しくは知りません。けれど祖父との約束なら兄は守るはずです…」